保育者様へ

フレーベル館のココだけの話

 

【保育ナビ】8月号特集 園の研修を考えるヒントが満載! 座談会 Web版記事を公開!(1)

2014/06/16

「保育ナビ」の読者の皆様に向け、本誌と併せてご活用いただくための情報を掲載します。

 

今回は、8月号特集の座談会で本誌には掲載しきれなかった内容を、2回にわたって公開します!

「研修」や「保育の質の向上」に役立つヒントが満載です。ぜひ「保育ナビ」本誌と併せてお読みください!

 

保育ナビ 8月号 特集

座談会 Web版記事 「今、リーダーの役割とは」 

 

2014年5月、弊社5階ホールで座談会を開催しました。社会福祉法人日本保育協会による研修の実態調査(中間まとめ)をご報告いただき、そこから見えてきた課題をもとに、「園長として研修をどうリードしていくか」という視点で、忌憚なき議論がくり広げられました。

なお、調査結果については、「保育ナビ」2014年8月号の特集記事をご参照ください。
 

  保育ナビ8月号、好評発売中です!

  本記事と併せてご活用ください。

 

 

 

 

 

写真左より

調査報告:井上眞理子 先生(洗足こども短期大学)・今井豊彦 氏(社会福祉法人日本保育協会研修部次長)、司会:岡 健 先生(大妻女子大学)、パネリスト :東 重満 先生(北海道 美晴幼稚園理事長・園長)・岩井久美子 先生(東京都 まちの保育園六本木園長)

 

 

 

◆ 「研修」のその前に――日々の共有こそが重要

岩井先生:
 当園では、午前中の保育で気がついたことは、お昼に時間をつくって共有するように意識しています。正規職員、非常勤職員と、働き方の形態はいろいろですが、「この園に必要な人」という視点で捉えればみんな同じなので、分け隔てなく話し合います。そこでは、保育者がどういう思いでその保育を行ったか、それによって子どもはどう感じたかという具体的なことに対する気づきを、みんなで共有し合っています。人材は宝ですから、園長自身も保育者の立場になって、丁寧に気持ちを聞き取ることが大事だと思っています。

岡先生:
 園の立ち上げ期だったり、若い保育者が多かったりすると、まだ経験もそれほどなくて、チームという意識が薄い場合があるのではないでしょうか。そういう時期には、まずは「その日の保育」を回していくための「動きの段取り」が必要となります。ある園で開園当初、若手スタッフばかりの状況で、かみつきや引っかきが多く起きたことがあったのですが、そこでまず何をしたかと言えば、担当の動きを表に全部書き出したのです。みんなが同じ動きをしたら保育が回らないので、「動きのマニュアル」のようなものをまずは作って、職員の動きに落とし込んでいきました。若い保育者は「想い」はあっても、何をしていいのかわからないので、まずはそのようなことを「研修」と呼んでもいいのではないかと思っています。

岩井先生:
 当園は開園から約1年半経ったところですが、開園当初は保育の経験も保育所保育指針を読んだこともないという職員もいました。いろいろな経歴の人が集まってスタートしたんです。そこで最初に職員と確認し合ったのは、様々な価値観があり、人生経験もそれぞれ違う人たちが集まったなかで、この園でどんな保育をつくっていくかということでした。疑問に感じた時は必ず共有するようにして、一つ一つ丁寧に積み上げてきました。岡先生がおっしゃられたように、そういった確認の作業自体が「研修」となり積みあがってきたと思います。研修といってもいろいろな形がありますよね。

岡先生:
 園内で語り合う時に、園長が自分の意見を一人称で語っても、それを職員に受け入れてもらえないことがあったり、みんなで話し合って園の保育をつくっていこうとする時に、園長として自分の価値観を前面に出すことがためらわれてしまう時もあったりするのでは? また、「自分はこう思うけれど、あなたはどう思う?」と、何でも話し合おうとする「懐の深さ」というか「聴く構え」が園長には求められるということがあり、そういう意味で、園長にとってはシビアですよね。

東先生:
 経営だけすればいいとする園長もいますが私は園長には現場にどれだけ深く関与してきたかという経験値が問われると思っています。保育現場での経験がないと保育者はついていかないのではないのかという実感があります。一番大事なのは、現場で行う「研修」なんですよね。保育時間中には長時間語り合うことはできないけれど、他の保育者の保育のやり方とか、子どもへの声のかけ方、子どもたちを受けとめる仕方等を保育者がお互いに見ていないと、会議室での研修も意味がないと思うのです。

岡先生:
 4月にある幼稚園に行ったのですが、3歳児でもおむつの外れていない子が3割くらいいたこともあり、新人の先生が対応に疲れ果てていました。その園はとても温かい雰囲気で先輩が新人を見守り、人材育成もきちんと取り組まれている園です。子どもたちへのかかわり方はベテランと新人では全く違っていて、まず目の動きが違います。園庭遊びから保育室に戻る時に、ベテランの先生はちゃんと子どもと目を合わせて、声をかけるんですよ。そうやって子どもとの信頼関係は築かれていくんですね。私が保育を見ていてそう感じたと先生方に話したところ、「言われてみれば、そうしていますね」と改めて気づかれたようでした。
 このように、ポイントを拾うことが大切だと思うのです。先ほど先生方が、現場にコミットメントすることが大事だとおっしゃっていましたが、こういった具体的な視点をもっているか、いないかが、コミットメントする際の差となってくるのではないでしょうか。


 ポイント 

 ・園長には何でも話し合う「懐の深さ」、職員の話を「聴く構え」が求められる

 ・現場に関与してきた「経験値」がコミットメントの差となる!

 

 

◆研修を行うための道具立てと語り合う場

岡先生:
 園長先生が保育に軸足を置いて、園として組織的に質を向上させようとする時、日々当たり前のようにくり返されている一つ一つの場面を丁寧に語り、共有していくことがとても重要になるでしょう。では、どうしたらそれができるのでしょうか。それには「道具立て」が必要になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

東先生:
 当園は異年齢構成のクラスなのですが、3歳から5歳までが1クラス30人ほどで生活しています。
特別な配慮や支援を要する子どもの割合が増えたので、今年から1クラス3人体制で受け持つようになっています。毎日の保育記録をメモするのは大変なので、必ずデジカメで写真を撮っておくようにして、子どもたちが帰ってからコメントを書くようにしています。「なぜこの場面を撮ったの?」から会話を始めることができるので、そこを手がかりにして気づいた点を交流させていきます。

岡先生:
 リーダーとして研修をリードしていくなかで、写真等の道具を用いて、子どもがどう育ちたいのかを見取り、そこにどのようにして適切な願いをかけ、どうかかわっていくのかといった、その意見の交流自体が保育の質を高めるのだと思います。 また、多分子ども一人ひとりが違うように、先生も違う。個々の先生にも育ちがあるわけです。先生にとって何が課題かを読み取るツールとして、話し合いの場を園長先生方は活かしているんですね。先生方は主任先生とそのような話し合いはされていますか。

岩井先生:
 当園は主任がいないので副園長と話しています。職員が今何で悩んでいるかとか。それはその職員だけの悩みではなく、園全体で共有できる悩みですし、全体の保育の質につながっていく部分という視点で、キャッチしていきます。例えば、0歳児の保育室で這い這いのバランスが悪い子がいるとします。その理由が担任にはわからなくても、教えてくださる講師の先生を探そうとか、どんな勉強をしたら実践に活かせるかなど考えていくことで、園全体にもつなげて、活かしていけるようになるので、そこは連携を取り合っていきます。職員と常にキャッチボールしながらですね。

東先生:
 当園はどちらかというと、ダイレクトに職員と話しています。保育者が9人なので、副園長・主任だけと打ち合わせをすることはあまりなくて、全員でミーティングをしますね。個別の案件については、そのミーティング後に園長抜きで話し合いをしています。ただ、そういった個別の案件が園長まであがってくるということは、よほどのことでなければありません。それに、保育の様子を見ていれば、気持ちが落ちているかどうかといったことは、報告されなくても気づきますね。

岡先生:
 東先生の園のように仕組みができていて、それが回り始めているところではそれでいいのだと思います。でも、どうやったらそこまでいけるのか。それは先ほどから出てきているように、「具体的な場面で語れるような道具立てをすること」「語り合う時間を設けること」といったことになるでしょうか。そして、子どもの話だけではなく、「先生についても話し合いができる場」があるといいですよね。調査側のご意見としてはいかがでしょうか。

井上先生:
 毎日の保育がうまく回っている園の研修と、それ以前に、安全に子どもが生活できて、基本的な発達を保障する仕組みがまだできていない園での研修は、意味が異なるのだということを感じました。私はカンファレンスの研究をずっとしていますが、写真やいろいろなツールを使って語ることをしていても、本音で語れない場合もあるという保育者の話も聞くので、そのあたりが園内研修の難しさだと感じています(「保育ナビ」本誌8月号の「提案」を参照)。

岡先生:
 たぶん、形にならないようなものなので、「形にならない形をつくる」ということなのだと思っています。

一同: (笑)

井上先生:
 そこがなかなか難しいのですよね。

 

 

 

 

 

 


  ポイント 

 ・保育観を共有するために、「道具」を手がかりに具体的な場面を語る

 ・日々少しでも「語り合う時間」をつくり出す

 

 

◆忙しい毎日だから、楽しんで保育をする

岡先生:
 だれにでも簡単にシミュレーションができるということで、企業だとブロックの玩具を使って研修をしたりしていますよね。だれがやっても上手下手が出ないのでよく取り組まれていますが、保育者にとっての写真もそれと同じなのだと思います。先ほどの幼稚園の研修でおもしろかったのは、3学期の最後の園内研修の時に、この1年間を象徴する大事なものは何かという発表をしたのです。
 1年目の先生とそのペアの先生が、「くまのぬいぐるみ」や「観葉植物」等を挙げていて、それがとても印象深かったです。なぜかというと、1年目の先生が初めて子どものために自宅から持ってきたのがそのぬいぐるみで、保育者になりたてで右も左もわからなかった時に、自分で考えて持ってきた最初のものだったのです。
 お気に入りを見せながら、なぜそれを選んだのかを伝える。また、子どもを撮った写真であれば、どうしてその写真を撮ったのか。そこに、その先生が表れているのだと思うのです。周りの先生たちが発表を聞いて、その先生が大事にしていることや思いに気づくことができます。
 こういった研修は、見方によってはふざけているようにも見えるかもしれませんね。でも、今、保育者はとても忙しくて大変な仕事だから、仕事をしていくなかで、忙しいからこそ遊んで楽しんだほうがいいと、私は思うんです。ずっとしかめ面だときついですよね。

岩井先生:
 ええ、そう思います。先ほどに岡先生がおっしゃっていたように、全部「目」に表れると思うんです。だから私は、「保育者であるあなたが一番遊び込んで、楽しんでみて」と伝えています。大人が楽しかったら、子どもが楽しくないはずはないですから。ある時、保護者会用のスライドショーをまとめていたら、園庭のビオトープで一番いい顔をして遊んでいたのが、うちの男性保育士だったんです(笑)。それを保護者会で最初の映像として映して、「こんなに大人が楽しいのだから、子どもだって楽しいですよね」と保護者の皆さんと語り合いました。「保育者自身も楽しむ」ということは、一番大事にしたい点です。

岡先生:
 本当にそうですよね。先ほど井上先生もおっしゃっていましたが、それぞれの園によっていろいろな段階がある。その中で、そのやりがいやおもしろさをどうつくっていくかですよね。私自身、たくさんの園内研修に入れていただき、見てきた実感としては、どうおもしろくしていくかという視点がないと、なかなか厳しいんじゃないかと思っているんです。時間もない、お金もない、職員も足りない(笑)。だからこそ、やっぱり仕事をおもしろがる視点がなければならないのだと思います。
 園長先生は、園のなかで職員の方々を引っ張っていくリーダーシップと専門性を備えている方で、職員に対してはきちんとした発言をしなければならないと思われていることでしょう。でも一方で、子どもと距離がある分だけ、逆におもしろがれる部分もあるのではないでしょうか
 よく私は山登りを例えにするのですが、小学校以上の教員は「山登りをすれば頂上からきれいな景色が見えるよ、登っておいで」と言って、子どもたちは「本当にきれいだね、先生ありがとう」となりますよね。でも、保育では、子どもたちは「僕、これに登った! すごいでしょ」「またあの山に登る時に、先生も連れていってあげるね」と言ってくるのだとよく聞きます。それで保育者が子どもに、「そう、連れていってくれるんだ。ありがとう」と。その時保育者は喜んでいるのだと思うんですよね。そうやって子どもが成長するのを喜んで見ている保育者がいる。そして、今回の特集に登場した事例園のリーダーのように(「保育ナビ」8月号本誌参照)、同様に保育者の成長を喜んで見ている園長先生がいる。そうやって、その関係性は入れ子になっているんだという気がしてならないのですよ。

(「座談会 Web版記事を公開!(2)」 につづく)


  ポイント 

 ・保育者自身が遊び込み楽しむことが重要

 ・リーダーが率先しておもしろがると保育が広がる

 

◆「保育ナビ」8月号本誌では、研修に関する座談会記事に加え、保育園、幼稚園の取り組みの事例と、「保育カンファレンス」についての提案を掲載しています。引き続き本誌をご活用いただき、貴園の保育にお役立てください!

 

座談会 Web版記事 「今、リーダーの役割とは」  次回は6月20日更新予定です>

 ◆次なる段階――研修から研究へ

 ◆「おもしろがる」=子どもや保育者の育ちに関心を寄せる

 ◆成功例を全体に広げていくために

 

 

(写真撮影/渡辺 悟   構成・文/編集部)

 

「保育ナビ」のご購入について

 ◆幼稚園・保育園等、園関係のお客様

 ⇒お近くのフレーベル館代理店・特約店・支社・支店・営業所または本社営業推進部(03)5395-6608にお問い合わせください。

 ◆個人のお客様

  「保育ナビ」のご購入はこちらから 

 

「保育ナビ」はWeb「保育ナビ+(プラス)」でも役立つ情報をご提供しています。

 保育ナビ+(プラス)の8月号も、ぜひご覧ください