保育者様へ

フレーベル館のココだけの話

 

HOIKUのYOU歩道 第7回 小林 紀子先生のあんなこと こんなこと

2013/08/19

第7回目は、青山学院大学教授の小林紀子(こばやし としこ)先生にご登場願いました。
小林先生の“保育の遊歩道”には、どんな発見があるのでしょう?
あなたの保育を楽しむために、ご一緒に歩いてみませんか?
“遊歩・優歩・YOU歩”…あなたにとっての道の向こうには、何が見えますか?

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小林 紀子先生の「はじめまして物語」
私のプロフィール

1951年、神戸生まれです。化学者だった父は、私が幼稚園に入園する前に単身渡米していたので、その間、母・姉と三人で暮らしていました。当時、庭で野菜や果物を育て、花に囲まれて1日中おうちごっこやお料理番組ごっこなどをして遊んだ記憶があります。近くには、炭鉱王のお城のような家や米国人の噴水のある庭園付き住宅があり、それらを友達と眺めながら、住人たちの生活を空想してはおしゃべりをしたり、おはなしを作ったりして楽しんでいました。

父は帰国すると、「米国では、クリスマス会を家庭で楽しんでいたよ」「子ども向けの玩具(ブロック、人形など)がたくさんあった」と話す一方で、当時、海外の科学技術を単に模倣する日本の実情に対して「模倣はよくない!」と常々言うようになりました。米国の生活ぶりを聞いたり、父が持ち帰った米国製電気掃除機の大きさに驚いたりしているうちに、次第に、日本でもクリスマスツリーや家電などが浸透したのです。

毎日の生活は繰り返されるものの、確実に変化していく。子どもながらに、生活の激変を身体で実感するという興味深い経験をして育ちました。このような幼い頃の体験が、その後の私の生き方に大きく影響を及ぼしてきたのだと、最近しみじみ感じているところです。

私の楽しみ

現在、私の勤務している大学は都心の青山にあり、居ながらにして様々な情報にふれることができます。キャンパス内で企業と共催のイベントに参加したり、近隣でタレントの撮影風景に出合ったり、気晴らしにアイドル事務所のファンクラブを覗いたりすることができ、なかなか刺激的です。

勤務を終えて帰宅する自宅は、都心からさほど離れていないのですが、山に隣接した場所にあり、なんと、タヌキの親子が出没します。庭用の履物をかじるのは日常茶飯事で、先日はトロルの置物で思う存分遊んでいったようです。

職場は激変する現代の環境を象徴しており、自宅は私が育った子ども時代の環境を反映しているようでもあり、その両空間のギャップを体験できるのは、とても興味深いことです。

自宅近辺では、時間があれば散歩を楽しみ、自然にふれる喜びを味わっています。これは、恐らく、先に挙げた幼い頃の原体験を追い求めているのでしょう。

イギリスに行った時も、ポターの残した庭園に何か懐かしさを感じたものです。

幼い時の過ごし方が、その後の生き方に影響を及ぼしていく。だからこそ、乳幼児期の保育は大変重要な意味があると再認識しています。

模倣遊び[ごっこ]

大学卒業後、幼稚園教諭、結婚、出産を経て、子育て期間中に大学院に通いました。研究の関心の1つは、幼い頃から繰り返し楽しんでいた模倣遊び[ごっこ]です。

子どもは、たとえ、同じ情景や物語を見聞きしても、一人ひとりが模倣し再現するごっこは様々であるということ。あくまでも、模倣する子どもの興味・関心に委ねられているということ。相手との関係の中で模倣が繰り返され、はじめは形真似だった模倣が、モノの本質を具現する模倣へと変容していくこと。その過程が遊びであり、学びです。

子どもの遊びは、試行錯誤の連続であり、状況に依存しているものの、その過程で、柔軟に相互交渉を展開しているのです。保育現場を経験した私は、このような、子どもの実に巧みなやり取りのおもしろさを実感すると同時に、その過程において子どもが自己を表現しつつ他者と共感しながら育つことの意義に、関心をもつようになりました。

私の模倣への関心は、[戦いごっこ]に始まり、[物語再構築][言葉の獲得][結果まね・原因まね]へと続き、現在も継続中です。

この原点は、父の「模倣はよくない!」への疑問にあると思っています。その後、研究を進めるうちに、「子どもの遊びにおける模倣は、試行錯誤を繰り返す創造的な営みである」と確信するようになりました。

[新と真]の探究

もう1つの関心は、[新と真]。幼い頃から戦後の復興と高度経済成長を生活レベルで実感し、変化し続ける中で変わらない[真]は何かということへの問いをもち続けてきました。保育の[新と真]を探究することは勿論のこと、私達の生活レベルでの[新と真]も探究していきたいと思っています。

幼児期に見ていた炭鉱王の家や噴水付きの住宅などは、エネルギー政策の変換や一億総中流時代の到来に伴う富の行方と共に、いつの間にか取り壊されていきました。この時代を経験した者として、ひと握りの階層だけではなく、我々多くの庶民が日常の娯楽を楽しみ、富を分かち合う共存社会を視野に、教育のキーワードとしての[共同注視][共感][表現(アート)]を重視していきたいと考えています。

都心の職場に象徴される環境は便利で興味深いものの、子どもにとっての価値を問う必要があるでしょう。[新]のよさを、どう[真]に繋いでいくかの実践が求められますが、様々な実践の取り組みに目を向けてみると、子どもが身体を通してかかわる環境、地域の人との交流が生じる環境、アートを媒介に対話を楽しむ環境の工夫など、[新と真]を繋ぐ興味深い実践にふれることができます。それらに一緒に加わりながら、今後も[新と真]を繋ぐ保育の探究を続けていきたいと願っているのです。

出会った人たち

大阪府高槻市と、東京都の公立幼稚園に勤務した私は、多くの先生方と出会い、子どもについて語りながら幸せな時を過ごすことができました。今でも当時の先生方との交流は続いており、学ばせていただいています。その間、一緒に勉強した研究者の方々とも、刺激的なかかわりが続いており、研究の取り組みなどにおおいに影響を受けていると言えます。

子育て中に院生となった私に、丁寧に御指導してくださった先生方には、自身が院生を指導する立場になった今、感謝の気持ちでいっぱいです。また、一緒に運営している研究所の仲間、共同研究の先生方、そして、大学時代の親友、子育て仲間であった地域の人たちに支えられていると思います。

対話を生み出す人形たち

おはなし作りやごっこ遊びが大好きな私は、中学生の頃から保育者になると決めていました。大学の児童学科に進学し、児童文化の授業で人形作りに挑戦した時のことは、今でも鮮明に覚えています。家で、母の洋裁の余り布を、じっと見ていた時「そうだ、オオカミにしよう! 強いだけじゃなくて、おしゃれでユニークな…」と、ひらめいたのです。

一度ひらめくと、あとは自分がイメージするままに人形作りに専念し、40年後の今でも愛用する宝物の手作り人形【オオカミくん】が誕生したのです。この【オオカミくん】は、実習時、そして保育者になってからも子どもと私との対話を生み出し、今では学生と私との対話を豊かなものに導いてくれています。

最近、研究室には、ノンフィクション作家の久田恵(ひさだ めぐみ)氏が主宰するパペレッタ・カンパニーで出合った【どこどこ人形】も加わりました。同氏は、子育てを応援する道具として親子で遊ぶ人形を提案しています。興味をもった私はゼミ生と共に参加して作ったのですが、【どこどこ人形】で子どもや学生に話しかけたり、自分に話しかけたりして、対話を楽しむ日々です。

編集部より

小林 紀子先生  あ・ら・か・る・と

小林先生のトレードマークとも言える「カチューシャ」、とてもお似合いですね。いつもチャーミングで夢を追い続けている少女のイメージの小林先生。

そんな小林先生と私との共通点は、某アイドル事務所の “K” と “K” (それぞれが違うグループ “K” に所属)のファンであること。彼らの育ちのプロセスに一喜一憂しながら、常に徹底したプロ意識に感銘を受けたという話題で盛りあがります。「何事にも徹底したプロ意識をもって仕事に邁進する姿勢には、学ぶことが多い」と断言できることも、二人の共通理解(?)。

老若男女関係なくいい影響を受けながら、想いのままに“いいコト・いいモノ探し”をたくさん積みあげることも大切ですね。子ども時代から変わらない創造力・探究心が、今の小林先生の原動力となっていると知ることができました。そんな楽しみ探しを自らの経験に活かすことは、【YOU歩道】の案内となり、保育の道標にも繋がりますね。

2013.August(C.S.)

小林 紀子先生の著書から
対話を生み出す本作り…

フレーベル館の保育図書としては、『私と私たちの物語を生きる子ども』『メディア時代の子どもと保育』『心を伝える 入園式・卒園式』を執筆しました。いずれも、編集の担当者が実直で、本を作る職人という印象でした。また、雑誌関連では、これまでに『保育専科』『Nocco』『キンダーブック』『保育ナビ』の執筆・編集などにかかわっています。

本を出版する、あるいは、雑誌の執筆・編集にかかわるということは共同作業でもあり、出版社の方は新たな視点やヒントを与えてくださるのだと興味深く思いました。印刷機の発明から庶民に普及する本作りが始まったと言えるでしょう。時代が変化しても、このような対話を生み出す本作りが、今後も続いていくことを願っています。

対話から生まれた著書…あんなこと こんなこと

子どもと物語との出合い・模倣(ごっこ) に注目して

子どもは、おはなしが大好きです。素話や絵本の読み聞かせを通して、様々なおはなしにふれながら物語を楽しんでいきます。

そして、何より子どもの素晴らしいところは、単に見聞きするだけではなく、自ら、その物語を再現しようとして遊びを展開すること。再現(模倣)された物語は原作通りではなく、創造的であるところに注目ですね。

今を生きる子どもに注目して

現代は、映像メディアを中心に様々なメディアが浸透しています。これらの多様なメディアに囲まれる子どもの生活は、生身の身体を通した経験が希薄化し、消費社会に組み込まれていく実情にあります。

だからこそ、保育においては、環境の問い直しと遊びの保障を強く求めていきたいですね。

行事の在り方に注目して

入園・卒園式は、幼い子どもとその保護者にとって人生の節目となる大切な行事です。

安心して園に登園できるようになり、楽しい園生活を送って欲しい。そして、園から自信をもって小学校に登校できるようになって欲しいという願いをもって、[心を伝える 入園式・卒園式の工夫]について紹介しています。

→ 「編集部ピックアップ」 でも、小林先生の著書を詳しく紹介しています

編集部より

著書のおすすめPOINT

小林先生のエピソードから、著書に込められた “対話” の大切さがとてもよく伝わってきました。特に、模倣(ごっこ)への想いは、自らの体験によるものなのですね。

“物語” “メディア” “行事” など、子どもの成長には欠かせないテーマに注目することで、新たな視点が広がるのではないでしょうか? “今を生きる子どもたち” と向き合い、子どもたちと楽しく対話を重ねた経験が、保育の原動力になるのですね。

2013.August(C.S.)

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