信念をもって
事業を展開する
私は岩手大学農学部林学科を卒業後、父の幼稚園に就職しました。父は「おまえの自由でいいよ」と言ったのですが、園バスの運転手もやりながら幼稚園を運営していた父の姿を見て、長男の私は、卒業したら幼稚園を手伝うことを決めました。
園で保育者と子どもたちの活動を見た時は、「ああ、こういうすばらしい世界があるのか」と感じましたが、ある程度経ってくると、今のままの保育でよいのかという疑問も出てきました。
そんな時、保育団体の研修会で藤永保先生と出会い、自分でもいろいろ勉強していく中で、発達心理学の見方・考え方が大切だと考えるようになりました。また、ある時は、大場牧夫先生に「子どもの主体性をどのように考えるのですか?」と質問したところ、「じゃあ、あなたは自由ということに、どんなイメージをもっていますか?」と逆に質問され、ハッとさせられたこともありました。
園長になったのは、1990年、47歳の時です。仏教本来の在り方を幼稚園教育で実現しようとした父の志を守りつつ、時代の変化に対応することに取り組みました。父からは自分自身の信念をもって事業を展開することの大切さを学び、自然や人とのかかわりを伝統的に大事にしてきた仏教の価値観に改めて出合った時代でした。
楠先生の新任時代のお話「父と仏教から、心を受け継ぐ」は、本誌をご覧ください!