保育者様へ

フレーベル館のココだけの話

 

HOIKUのYOU歩道 第18回 古川伸子先生のあんなこと こんなこと

2015/06/15

第18回目は、元宝仙学園短期大学教授の古川伸子(ふるかわ のぶこ)先生にご登場願いました。
古川先生の“保育の遊歩道”には、どんな発見があるのでしょう?
あなたの保育を楽しむために、ご一緒に歩いてみませんか?
“遊歩・優歩・YOU歩”…あなたにとっての道の向こうには、何が見えますか?

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古川伸子先生の「はじめまして物語」
私のプロフィール

1936年、神奈川県横須賀市で三姉妹の末っ子として生まれました。

特に、何もない人生の始まりのはずでしたが、戦時中の小学校(当時は国民学校)3年生の時に集団疎開に行きました。この体験によって、集団生活の大変さ、耐えることの大変さがわかったように思います。そして、いつもお腹を空かせていた記憶があります。畑の桑の実の甘くておいしかったこと! 唇を紫色にして笑われたことも…。

麦の穂を取って麦粒をずっと噛んでいると、チューイングガムのようになるので、長い時間、口の中で楽しめることを発見!

終戦になり、疎開先から自宅に戻れた時には、町はアメリカの水兵でいっぱいでした。

私が高校3年生の時、二人の姉は保育者になっていたこともあり、父の退職とともに幼稚園を設立。そこで、何も考えていなかった私は、そのまま宝仙学園短期大学の保育科に進学することにしたのです。

児童文化部に入り、人形劇や影絵の制作、公演などと、夏休みもなく活動し、とても楽しい学生生活を過ごしました。その経験は趣味としても、ずっと楽しむことができ、生き甲斐を与えてくれています。

保育者になって悩んだこと

子どもたちとの毎日は、いつも驚きに満ちていて、保育の難しさも考えずに、ただ子どもたちと楽しい日々の連続。

でも、若かった私にとって大変なことは、人間関係。園長と主任、保育者間、保護者との対応など。特に、職員会議は、園長と主任だけで進行し、ほかの職員は黙ったままで終わるというパターンが多い日々。そして、新任保育者を育てる立場になると、またまた難しい課題ばかりでした。

ある日、5歳児クラスの新任のK先生が生活発表会のために器楽合奏の練習をしていた時のこと。何か手伝うことはないかと思い保育室に入ってみると、K先生は、音楽のメロディーを歌いながら、両手、顔、目と、全身を使って器楽合奏の分担奏を指導している最中。1曲演奏が終わった時、子どももK先生も、大きなため息をつきました。いかに緊張していた時間であったか? その時、Yちゃんが「先生って、一所懸命なんだねえ…」と、吐息のようにつぶやいたのです。すると、K先生の緊張もふっと抜けて、みんなで大笑い。傍にいた私も、思わず吹き出してしまいました。

この5歳児にとっては、先生がいかに自分たちに真剣に向き合ってくれているのかが、わかったのです。子どもたちにとっては、新人もベテランも関係がない。“指導の未熟さ”とは何か? “保育技術”とは何か? と、考えさせられたひとコマ。

この体験は、私の保育者としてのあり方に、大きな影響を与えてくれました。

保育者にベテランはいない

「保育者にベテランはいない」…これは、白金幼稚園に勤務していた時、当時の園長だった海卓子(かい たかこ 1909~2011)先生の言葉です。

どんなに長く保育者の経験があっても、新任であっても、新年度の新入園児とは、誰もが初めての出会い。「保育者にベテランはいません。いつも保育者は、子どもにとっては新人なのです」…私の胸に、ズシンと刻まれた言葉でした。

自然を大切にする海先生は、自然を守るために多くの時間と労力を費やしていました。昭和30~40年代は建設ラッシュで高い建物が増えていました。その最中、「トンボがいなくなる」と、幼稚園の園庭の日照権を問題視し、自然環境を守るための熱の入った運動を始めた海先生。さらに、保護者たちも協力を惜しまず、熱気溢れた運動になりました。そんな時、私は「先生は、どうしてそんなに自然を守る運動をするのですか?」と質問をしたところ、「自然は、子どもの“飯”だよ!」…納得です!

保育者は、子どもの研究者

「保育者は、子どもの研究者」とは、心理学者の城戸幡太郎(きど まんたろう 1893~1985)先生に書いていただいた原稿のタイトルです。この言葉は、私の保育者としてのあり方を決定づけてくれました。「子どもを研究する」こと、「保育者にベテランはいない」という、この二つの言葉は、私の心に深く染み込んでいます。

子どもにとっての先生は、ベテランも新人もいないのですから、キャリアに関係なく、保育方法も、保育技術も、関係ないのです。子どもと語り合い、子どもを観察し、研究し合うことで、誰もが同じ目線で子どもに向き合うことができるのです。

フレーベル館との出合い…

かなり古い話になりますが、明治34(1901)年に創刊された日本最古の保育研究誌『幼児の教育』(日本幼稚園協会/編)の愛読者である私にとって、フレーベル館の保育雑誌『保育の手帖』が、初めて実践事例を書く機会となりました。その後、足利短期大学に勤務していた時、地域の保育者と『保育専科』(『保育ナビ』の前身)に指導計画を連載。

また、宝仙学園幼稚園(東京都中野区)の昭和57(1982)年頃の園長だった青柳義智代(あおやぎ よしちよ)先生の聞き取りをまとめた『私立幼稚園の昭和史』の出版(1985年発行)をお願いした時、快く引き受けてくださったのが、フレーベル館でした。

青柳先生は、全国学校法人幼稚園連合会の初代会長も務めた方です。戦後、焼け跡の幼稚園や子どもたちに保育用品などの支援を受けたことや、日本私立幼稚園協会設立の時にも物心両面から、フレーベル館より多大な援助を受けたことなどを、青柳先生からお聞きしています。

私の楽しみ

学生時代に燃えた「人形劇」。現在は、プーク人形劇場に行くのが楽しみ。動かないはずの人形が人間の手によって動き出す不思議さ。人形の動きの面白さは、大人になった今でもたくさんの発見があります。

それから、演劇、オペラを観ること。新国立劇場の会員になり、通い続けています。特に、オペラは、人間の肉声の素晴らしさに、震えるような感動を覚えます。自宅から歩いて行ける距離には、国立能楽堂があります。周りには、興味のある環境がいっぱいあります。

そして、私の友、50歳になるシロちゃん。就職した時に最初に手作りした犬の指人形です。これから20年後、このシロちゃんと今の子どもたちは、どんな日本に住んでいるのでしょう。

期待と心配が、大きく揺れ動きます。

編集部より

古川伸子先生 あ・ら・か・る・と

宝仙学園幼稚園の保育見学に誘われて訪園したのがきっかけで、古川先生に出会い、『育ちあう心 育ちあう姿』が、誕生。

宝仙学園幼稚園では、通年の実習があり、子ども・保育者・実習生の1年間の成長を追えることで、様々なドラマが生まれました。その中で、「今の学生は、こんなこともわからないの!」という指導側の苛立ちに対し、「1を知れば、10を知る時代」から「10を教えて、1を知る時代」へと、ジェネレーションギャップを埋めながらの実践。

いつも笑顔を絶やさず、気さくな古川先生。常に、保育の根っこを大切にしている姿勢がエピソードの中からも伝わってきました。

2015.Jun(C.S.)

古川伸子先生の著書から

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子ども・保育者・実習生からのメッセージ
育ちあう心 育ちあう姿

教育・保育実習研究会/編著

宝仙学園短期大学と宝仙学園幼稚園との実践を書籍に!

ベテランも新人もともに保育に向き合い、ともに学び合うためには、どう取り組んだらよいのか…というのが、長年悩み続けた私の課題。

短大の実習生と幼稚園の教師、その真ん中に、子どもたちがいる。その子どもたちを中心にした実践を通して、保育を見つめ直すことができないだろうか?

(1)教師の悩み・喜び
(2)実習生の不安と学びの姿勢
(3)短大の授業と実習(保育現場)とのズレ

この悩みの橋渡しをしてくれたのが、友人の諏訪きぬ先生(元明星大学教授)です。フレーベル館編集者のSさんを紹介してくれたことにより、当時の月刊保育雑誌『Nocco』(『保育ナビ』の前身)の特集記事になり、さらに、1冊にまとめる企画が通ったのです。

しかし、教師の日々の記録を突き合わせ、実習生の育ち、子どもたちの育ち、担任の悩み、短大の教員との協力。さまざまな姿をまとめる作業は、不安の連続でした。

その中で生まれたのが、『育ちあう心 育ちあう姿』です。

本書の実践を通して、「若い保育者を育てるためには、一人の保育者の仕事ではなく、子どもを含めて短大の教員も総合的に“関係”の中で“育ちあうこと”、そして、個々は関係のあり方を学びあうことだと感じました。そのため、この実践にかかわったすべての人たち(当時の幼稚園の職員)の想いをのせ、【「教育・保育実習研究会」/編著】として、まとめました。もちろん、サブタイトル[子ども・保育者・実習生からのメッセージ]にあるように、実習生と子どもたちも重要な役割を担っています。

実習生の顔を真っ直ぐに見つめている子どもの姿。表紙の写真が、私たちのメッセージを物語ってくれています。

実習生を受け入れている現場の先生方には、ぜひ読んでいただきたいと願っています。

『育ちあう心 育ちあう姿』の思い出 あんなこと こんなこと・・・

☆ 子どもと生活するということは

“保育”とは、“何かを教えること”と考えがちですが、“子どもと生活することの延長に遊びがある”のです。そのためには、「子どもと生活する場」である園の環境を考え、準備することから保育は始まります。実習生のイメージを具体化し、指導する側も共有しながら実習が始まるのです。

☆実習生を指導することで、保育者自身が“初心”に戻る

指導案の書き方・遊びの展開など、指導や振り返り・記録を整理する作業の中で、「実習生の頃を思い出すね」などと職員と語りあいました。自身も初心に戻り、改めて保育者としてのあり方を見直す機会になり、自分の保育を客観的に見る機会を得ることができました。

☆ 短大の授業のあり方と実習とのズレ

実習生が保育に取り組む中で、授業で受けた保育の捉え方と実際の実習とのズレに悩む姿がよく見られます。実習生の受け入れは、プロの保育者養成として、自身をもって保育現場に送り出すことの責任を感じるとともに、保育を振り返るとてもよい機会です。

→ 「編集部ピックアップ」 でも、古川先生の著書を詳しく紹介しています

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編集部より

著書のおすすめPOINT

『育ちあう心 育ちあう姿』は、実習にかかわるすべての人たちが共に育ちあっていくことの大切さ・実習のあり方について、実践を通して提案しています。

実習生を担任とは思わず傍観している3歳児。実習生と闘う4歳児。“本当の保育者になるため”にと、実習生を助ける5歳児。

「叱ってくれてありがとう」という実習生の言葉に込められた想い。本気で指導していれば、保育者の気持ちは伝わっていく…。

実習にかかわるすべての人たちに、ぜひおすすめしたい1冊です。

2015. Jun(C.S.)

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