保育者様へ

フレーベル館のココだけの話

 

HOIKUのYOU歩道 第17回 やまもと かつひこ先生のあんなこと こんなこと

2015/04/23

第17回目は、日本福祉大学准教授のやまもと かつひこ(山本克彦)先生にご登場願いました。
やまもと かつひこ先生の“保育の遊歩道”には、どんな発見があるのでしょう?
あなたの保育を楽しむために、ご一緒に歩いてみませんか?
“遊歩・優歩・YOU歩”…あなたにとっての道の向こうには、何が見えますか?

→ フレーベル館の保育図書詳細

→ フレーベル館の電子書籍詳細

やまもと かつひこ先生の「はじめまして物語」

座右の銘は、宮沢賢治の名言

「風とゆききし 雲からエネルギーをとれ」

ちなみに、賢治さんとは同じ誕生日
諺の「明日は明日の風が吹く」も、いい
風のように生きたいというのが、僕のモットー

僕のプロフィール

子どもの頃の僕は、病弱な少年。生まれてから今までの「僕の将来の夢」の変遷は、お医者さん(幼稚園時代)、医師(小学校低学年時代)、小児科医(小学校高学年時代)…と、だんだん具体的になりながらも現実を知り、次はアイドル歌手(中学~高校時代)、そして小学校の先生(大学時代)と、段々と現実味を増すようになりました。

そのせいもあるのか、何度も転職を繰り返し、現在は大学に勤務。もし、神様が「何にでもしてあげる」と言ってくれたとしたら、「仮面ライダーになりたい…」などと、また現実から遠ざかる…かも?

子どもに向き合う

“子ども”をキーワードとすると、僕と“子ども”との出会いは大学時代のYMCAのボランティアの時。きっかけは、「子どもが好き、子どもたちと一緒にいると、自然体でいられるし、教師になるための勉強にもなる…」と思ったから。週末には子どもたちとスポーツやアウトドア活動で過ごす日々。夏休みは、キャンプ・リーダーとして海へ、山へ。冬休みは、スキーにスケート…と、自分自身にとっても新鮮な体験をしながら、多くを学びました。

大学卒業後は中学校教員を6年間、教科指導よりも担任として学級経営が楽しくてしかたないという熱中時代でした。その後、学校教育の現場に思うところがあって、京都YMCAへ転職。そこで今度は、本職として“子ども”のスポーツやアウトドア活動にかかわり、大学生のボランティア・リーダーのコーディネートにも携わりました。

YMCAでは、幼児や親子対象のスポーツや遊びのクラスを企画・運営し、約4年間勤務。その後、保育園の副園長として児童福祉にかかわります。

大学という世界へ

指導者よりも支援者、先導者よりも伴走者…。“子ども”と共にあるって、そんなイメージじゃないかなと日々感じる中で、“子ども”や子育て家庭、そして地域のあり方を考えて保育実践をするうちに、「しっかりと福祉を学ぼう!」と思い立ち、副園長をしながら龍谷大学大学院へ社会人入学。 当時、地域の児童家庭課と取り組んでいた子どもの社会参画による「まちづくりとワークショップ」をテーマに修士論文を書き上げ、無事卒業。

かねてから描いていた大学教員を目指して就活!? 数十校の大学に履歴書を出しまくり、地元の短期大学教員となったのは、40歳になろうとする頃。研究者としては遅いデビューでした。滋賀県の短大には2年間、その後、岩手県立大学で保育者と福祉専門職の養成に11年間、現在は、愛知県の日本福祉大学に勤務しています。

“信じる”という力、“待つ”という技術

「小学校の先生」に憧れて、小学校の教員採用試験を受けて合格はしたけれども、勤務先が中学校だった! 恐る恐るスタートした教育現場で、僕はいきなり2年生の担任。難しい年頃の子どもたちを相手に、学級の一人ひとりと交換ノートをし、学級通信を発行し続け…転勤もあって2校を経験。

2つ目の中学校は、県下でも有数の(?)いわゆる荒れている学校。それでも、全力で子どもたちと向き合う日々。時間はかかったけれども、本気で向き合えば信頼関係も少しずつ築けるし、子どもたち個々の本来もっている力が見えてくることを確信。大切なことは、僕たちオトナが、“子どもが本来もっている力を信じて、待つこと”なのだと。

「“信じる”という力、“待つ”という技術」、これは生徒だけではなく、地域の子どもたちに対しても、オトナ社会の人間関係でも、家族でも、とても大切だと思うのです。教師を辞めた後のYMCAの現場でも、保育園での園児たちや保護者の方々に対しても、大学生を相手にする今でも、ずっと僕はそのことを大切にしています。

“恩返し”から、“恩送り”へ

僕自身が大学生だった時、お世話になったオトナの方に「ありがとうございます。いつか恩返しをしますね」と、何気なく返したことがあります。その人は、「それはいい。自分も学生の時、オトナに世話になった。その気持ちを忘れずに、今度はあなたがオトナになった時、次の世代を大切にしなさい」と。

僕は単純に、その人を「カッコいいな!」と感じたことを覚えています。その言葉の意味がしっかりと理解できたのは、つい最近かもしれません。学生時代にボランティアに燃えていた僕は、教育の現場や、YMCAで若者と共に育つ現場を経て、児童と高齢者が共に過ごす福祉施設に就職。

寝返りを覚え、つかまり立ちをし、よちよち歩き始めて…という子どもたちの時間の流れ。そのすぐ隣で、今まで歩いていた方が車いすに頼るようになり、ベッドでの生活に…と、人が生きていく物語のすべてを間近に感じることになったのです。自分なりにいろいろと考えながら、教育とか福祉とか、そういうくくりでは片付けられないような、あるいはすべてに繋がるような、そういう人としてのあり方を考えるうちに、“次へ送ること”を考えていたのかもしれません。

大学教員として大切にしてきたこと

社会福祉の分野の中でも、保育者と福祉専門職の養成が僕自身の仕事。当初の専門分野は児童福祉でした。しかし、いわゆる授業よりも、ついつい力が入ってしまうのが、学生たちとの課外活動です。岩手県立大学では、赴任の年度(2003年)に偶然にもオープンした大規模児童館(いわて子どもの森)のサポート・ボランティアチームを学生と共に立ち上げました。そのチームはどんどん大きくなり、活動の内容も範囲も広がっていったのです。

2004年の中越地震が発生した時は、数名の学生と“災害時の子ども支援”のために被災地へ。2007年の中越沖地震では、その後輩たちがシフトを組んで、約2か月間、往復1,000kmを行き来し、災害ボランティアセンターの運営支援にあたりました。

僕が大切にしてきたのは、学生たちが心から感動し、汗や涙を流すような体験の機会を提供すること。災害は起きては困るけれど、そのことを知った学生は、「何かしたい、どうすればいいですか?」というオモイをもちます。そこに応え、「オモイをカタチに」すること、できれば、一緒にその場を共有することが、僕の役割だと考えています。

震災という非日常

学生たちは4年間を原則に、大学から巣立ちます。過去の災害ボランティアの現場、そこで気づき、学んだことを、次の学生へ次の学生へと送り続けたのです。岩手県立大学内には、2008年に学生だけで運営するボランティアセンターが誕生し、僕はアドバイザーとして、学生のチカラを信じて待つことに徹していました。

2011年3月11日、東日本大震災のあの日。日常の活動を、大震災という非日常に繋ぐ力をつけていた学生たちが、全国の大学生に呼びかけ、毎日200名の学生ボランティアを受け入れる拠点を運営したのが、いわてGINGA-NET です。このプロジェクトは、当時の学生が設立したNPOによって、今もなお、継続しています。

震災という非日常は、被災地を毎日巡回する中で、僕にもう一つの機会を与えてくれました。それは、家族や家、友人や多くを失ってしまった子どもたちとの出会いです。

進学とか、就職とか、これまで描いていた夢をあきらめざるをえない状況。中には、家族を亡くし、生き残った自分を責める子どももいたのです。災害によって多くを失った子どもたちが、さらに自分の夢をあきらめる姿…。なんとかしたいと僕は考えました。

― 夢を描き直す場づくり ― 子どもたちが安心して、自分らしく過ごせる場を提供し、そこから夢を描き直し、夢に向かって行動することを支援する場をつくる。

そうした目的で設立したのが、僕が代表理事を務める一般社団法人子どものエンパワメントいわて。岩手県沿岸の5つの市町で20か所の場を提供するまでになりました。

このような活動から、現在は、災害ボランティアのあり方や、災害時に繋がるふだんの地域福祉(災害ソーシャルワークと呼んでいます)を専門分野とするようになっています。

“生き方”としての僧侶

3.11の震災から3年目(2013年)の夏、僕は僧侶になりました。法名は、「釋 克風(しゃく こくふう)」、大好きな“風”の文字をいただきました。

実家がお寺だとか、そういうわけではありません。震災後もずっとずっと、被災した地域とそこに生きる人たちにふれあう中で、“命を考える機会”が多くありました。

当たり前のように、朝、交わした挨拶が最後だった。もう会いたくても、会えない…。僕たちは、“明日が来ること”を当たり前のように考えてしまっていますが、そうではないことを被災地の方々に教えていただきました。

僧侶であることで、何かお役に立てるかどうかはわかりません。でも、“命のこと、生きるということ”を考えねばならないと思ったのです。お寺という場所は、震災直後から、地域の方々の避難場所となったり、心の拠り所となったりしています。ふだんから、地域の方々のことをよく知り、何かにつけて人々が集う場所です。

最近、世の中のさまざまな課題に向き合う専門職として、コミュニティ・ソーシャルワーカーが話題ですが、僕自身は“コミュニティ僧シャルワーカー”を名乗ろうと思っているのです。

フレーベル館との出合い

僕とフレーベル館との出合いは、YMCAで“子ども”のスポーツやアウトドア活動の現場にいた時のこと。当時、幼児や親子を対象にさまざまな企画、実践をしていました。

室内遊び、自然遊び、水遊びに親子遊び…YMCAではそうした場づくりが楽しくて、クリエイティブな毎日でした。遊びにもちょっとアレンジをしたり、キャンプにもストーリー性を取り入れてみたり、まあ、創作料理に熱中するような、そんな感覚だったのかもしれません。

そんなちょっぴり“はみ出した”僕を見つけたのは、“ちょっぴりはみ出し感”が好きな(?)フレーベル館編集のSさん。なんと、そんな僕に、当時の月刊保育雑誌『保育専科』(『保育ナビ』の前身)に執筆する機会をくださったのです。

その後は、特集記事だけでなく、当時の月刊保育絵本『がくしゅうおおぞら』(付録「おかあさんの本」に遊びの連載)や保育図書にも執筆しました。こうして、僕の多くの創作料理が生まれました。その中で、いつも大切にしてきたのは、「子どもたちが本来もっているチカラやセンスの“芽が出て、伸びてゆく機会をつくること”。それを信じて、じっと待つという保育のあり方」を重視しています。

インディアン・ジュエリー

僕の最近の趣味は、インディアン・ジュエリー。アクセサリーでありながら、インディアンの生き方や考え方がそのデザインの中に込められています。中でも僕が好きなのは、自然物をシンボルとした、ホピ族の伝統的な手作りの作品です。

人間の暮らしを見守る太陽、力と勇気を象徴する熊、人生の選択を意味するメイズ、幸福を呼ぶ精霊のココペリなど、とても魅力的です。私たちが“繋がりの中に生きているということ”や“自然の恵みに感謝して生きること”の大切さを教えてくれています。

また、“目の前の人や場と対話しながらあるべき自分の姿を考えること”など、おそらくふだんの保育のあり方や、自らの生き様にかかわるようなメッセージを感じることができるからなのかもしれません。

編集部より

やまもと先生 あ・ら・か・る・と

やまもと先生と出会ったのは、京都の地下街のファーストフード店の前。仲間の2名と一緒でした。実年齢よりも若い青年たち(笑)は、パワフル&ユニーク。その『アウトドア活動入門』という書籍の発刊に合わせ、「関西あそび工房」が始動しました。

やまもと先生のエピソードにもあるように、とにかく、転職&転職…。「人生、安定すると不安になる」とかなんとかの信念らしいのですが、常に、己にチャレンジ精神が旺盛。が、見かけとは裏腹に、かなり繊細なところとのギャップも感じられます。そのあたりが、“恩送り”の原点になっているのでしょう。

そのうちきっと、宇宙人になっているのではと、期待しているのです…が?

2015. April(C.S.)

やまもと かつひこ先生の著書から

やまもと かつひこ先生の保育図書好評発売中!

行事別保育のアイデアシリーズ1
元気がいっぱい 夏期保育

僕の仲間=「関西あそび工房」

本書は、「夏だからできること」「夏だから気をつけること」「保育者に求められるスタンスとは」を柱に、あまり準備の必要のない即興的遊びを中心に取り上げています。“遊びのレシピ集”ではなく、保育者自身の発想を広げ、自らが楽しみながら保育を展開していくための “しかけ”が満載です。

関西あそび工房は、ゆるやかに繋がりあう仲間たちのチームです。保育現場で活かせるあらゆる“あそび”について、執筆テーマをいただくたびに、新商品を開発するようなイメージで、これまでに数百のオリジナル遊びを生み出してきました。作品ということもできるかもしれませんね。主には、アウトドアでの自然遊び、ネイチャークラフトやお泊り保育、水遊びなど。いずれも大切にしているのは、大自然と楽しくおつきあいすること。子どもたちの感性がひき出されるしかけのような遊びです。

ほかにも室内遊びや親子遊び、運動会にお誕生会…とどんなテーマにも取り組んでいます。準備や練習で現場の保育者に負担にならないような配慮も大切。関西あそび工房には保育所、幼稚園の経験者もいます。また考案した新作遊びは地域の子育てサロンでしっかり試してから公開しています。

当たり前のことですが、現場主義にこだわった作品づくりが僕たちのモットーなのです。最近は災害時に備える防災・減災遊びなどを専門とする仲間も増えました。

やまもと かつひこ先生の電子書籍 好評発売中!

手づくり保育シリーズ〈16〉
わくわくどきどき 自然大好き遊び!
→ 「編集部ピックアップ」 でも、やまもと先生の著書を詳しく紹介しています

編集部より

著書のおすすめPOINT

『夏期保育』は、「それぞれの場面で子ども自らが興味をもち、選択し、決定して取り組んでいるかどうか」という視点で、さまざまな遊びを紹介しています。

夏という魅力いっぱいの季節に、子どもたちとどう向き合っていくか。子どもにとってはもちろん、保育者にとっても豊かな発想が生み出される内容です。

2015. April(C.S.)

著者紹介

やまもと かつひこ[山本克彦]

日本福祉大学福祉経営学部 医療・福祉マネジメント学科准教授/「関西あそび工房」および、「生涯学習研究所SOUP」代表。

公立中学校教師、青少年教育団体職員、保育園の副園長などを経て現職。地域福祉と災害ソーシャルワークを専門とし、子ども支援の現場にかかわる。(社)日本キャンプ協会キャンプ・ディレクター1級、日本赤十字社救急法指導員。

[ホームページ]山本克彦研究室

※幼稚園・保育所関連のお客様につきましては、お近くの小社販売店でもご注文を承っておりますのでお問い合わせください。また、お近くの販売店が不明な場合はフレーベル館 営業推進チーム(03-5395-6608)までご連絡ください。

※その他、お問い合わせ・ご感想はコチラの問い合わせフォームよりお送りください。