保育者様へ

フレーベル館のココだけの話

 

HOIKUのYOU歩道 第14回 大澤 力先生のあんなこと こんなこと

2014/10/23

第14回目は、東京家政大学教授の大澤 力(おおさわ つとむ)先生にご登場願いました。
大澤先生の“保育の遊歩道”には、どんな発見があるのでしょう?
あなたの保育を楽しむために、ご一緒に歩いてみませんか?
“遊歩・優歩・YOU歩”…あなたにとっての道の向こうには、何が見えますか?

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大澤 力先生の「はじめまして物語」
私の幼少期

私は、1952(昭和27)年、千葉県市川市生まれ、市川市育ちです。

当時はまだまだ身近なところに自然が多く、牧場やイチゴ畑や梨畑が広がり、町内には気さくなおじさんやおばさんがたくさんいて、いつも幼なじみと楽しく遊んでいました。幼い頃、町内会で訪ねたことのない家は一軒もなかったように記憶しています。中学生のガキ大将から幼児まで、30人くらいが一緒に遊ぶこともあり、日曜日には、近所の三角公園で草野球に興じたり、道路を塞いで缶けりをみんなで楽しんだものです。現在も、朝の出勤時、たまにその頃の仲間に出会うと、当時と変わらない関係が続いていることに気づき、嬉しく思います。

常に自然体で…

「これが趣味です…」と言えるかどうか? とにかく、自然にたっぷりと浸かるというか、沈み込むというか、大自然の真只中に身を置くこと…そんなことが大好きです。高校生の頃から、毎月1回は泊りがけで出かけています。振り返ると、今年で半世紀弱も続けていることになり、自分でもよく飽きずに続けているなあ…といった感じ。それこそ“自然の中に身を置くと、本来の自然な自分に立ち戻れて、落ち着く”のです。

ほかには、おいしいものを楽しく食べること。学生と一緒だったり、家族と一緒だったり、飲み仲間と一緒だったり…。先日は、この原稿の締め切り間近にもかかわらず、仕事仲間数人でおいしい地ビールを飲みに外国にまで出かけました。その味は、また格別なものがありますね。その余韻もあり、お陰で(?)筆が進みました!(笑)

近況・ミツバチの飼育

今一番の楽しみは、仲間と共に始めた「ミツバチの飼育」です。9月下旬には、蜂蜜が大瓶に4本ほど取れました。

この蜂蜜を使って、おいしい菓子や料理を作ったり…将来は、販売して多少儲けたりして、カフェ(喫茶経営)でもやれたら最高ですね!!(笑)

カフェのマスターが本業で、大学の仕事が副業なんて…カッコイイかも???

玉川大学創設者・小原國芳先生との出会い

高校から大学に進学する際、本当は獣医になりたかったのです。ドリトル先生のように世界中の動物と話ができ旅行できる獣医さんに! しかし、受験した獣医系の大学はすべて落ち、1年浪人。そして、再チャレンジ…でも、またダメ! その時、高校の担任のT.Y.先生から「大澤君、獣医でなくても、自然とかかわるには農業も良いと思うよ。玉川大学には、小原國芳という筋の通った教育者がおられる、きっと君に合うよ!」。

そして、玉川大学農学部を受験。見事合格! 通い始めたら、やはり、玉川大学は私にぴったりでした。しかし、自宅から玉川大学のある町田市までは…通学に約2時間半掛かります。そこで、父に頼み、大学寮長の了解を得て、入寮しました。寮生から毎年2名程、小原先生のお世話係(玉川学園での通称「おやじ当番」)が選ばれます。

“幸いに”私は「おやじ当番」に抜擢され、小原先生のご自宅(玉川大学のほぼ中央に小原先生の家。現在は「小原記念館」)に住み込み、大学に通いました。まさに、小原先生ご家族の一員としての温かく厳しい教育の始まりです。1年3か月、こうした本当の人間教育を受けられたこと、心より小原先生ご家族に感謝しております。

更なる教育・研究の勉強へ

初めは自然とかかわる仕事を希望していましたが、小原先生との出会いから、人を育てる仕事を志すようになりました。妹が幼稚園の先生をしており、「お兄ちゃん、幼稚園っておもしろいよ! 一度、私のクラスに遊びに来ない?」と。そこで、妹のクラスに“大きな園児”として、お弁当を持って1週間通いました。

「本当だ、幼稚園の先生って素晴らしい!」そして、幼児教育に一生を掛けてみようと決心。幼稚園教諭免許を取ること、フリードリッヒ・フレーベルについて学ぶこと…、こうした基盤のうえで自然と幼児教育を重ね合わせ、発展的に保育展開する仕事を目指してきました。

その頃に、山内昭道先生(東京家政大学名誉教授)との出会いがありました。それは日名子太郎先生(元玉川大学教授)のご紹介によるものです。「大澤君は、農学部を出ているから、子どもと自然のことをやったらいいよ。それには、山内君が最適だ。今度の講演会の会場に山内君を訪ねてゆきなさい!」と、紹介状を書いてくださいました。

初めて会った時、山内先生は「君は、酒が飲めるか?」と、一言。「はい、頂きます」と、即答。「じゃ、帰りに一杯やろう」。それ以来、私は山内先生の自然研究会事務担当など、次々と役割をこなしているうちに20年近くの月日が流れました。

幼児教育現場における悪戦苦闘の日々

玉川大学での免許取得と教育学科大学院での勉強の後、幸いなことに玉川学園幼稚園の担任として勤務することができました。4歳児・うさぎ組(30名)の子どもたちとの楽しくも悪戦苦闘の日々。最初に担任した子どもたちのことは一生忘れません。今も一人ひとりの姿が目に浮かびます。初めて男の先生が担任となり大喜びのMちゃん…保護者面談で母親からMちゃんが男言葉になり困っているといった相談。また、Sちゃんの顔に引っかき傷…すぐに父親が怒鳴り込んで来たことなど。2年目の作品展で子どもたちと一生懸命に作った巨大クジラ…。この時、主任教諭と教育方針の違いから大喧嘩(今なら絶対に負ける喧嘩はしません…当時は若かったな!)。

その翌年、玉川学園を辞し、山奥の温泉があり蛍やイノシシの棲む神奈川県厚木市の七沢幼稚園に転職。主任・担任・バスの運転手など一人五役ぐらいをこなす大忙しの生活がスタート。夏は、子どもたちと谷川で水遊び、突然K君が滝壺へのジャンプ…ひやっとした瞬間、K君の笑顔が水面に浮かび…ホッと一安心などなど。

以後6年間、大自然に囲まれ、心豊かな保育を日々展開しました。我が娘も2歳から4歳まで七沢幼稚園に、毎日一緒に園バスで通園です。息子も誕生し、充実した幸せな幼稚園教諭時代でした。

さらに、埼玉県三郷市のわせだ幼稚園で主任と専門学校非常勤を兼務した2年間。合わせて10年間の幼稚園教諭の経験は、本当に私の宝物となり、現在の実践研究や教育指導に大いに役立っております。

フレーベル館との出合い

山内先生は、亀戸幼稚園(江東区)の園長や東京家政大学の教授、幼少年教育研究所や日本私立幼稚園連合会の役員など、多忙な日々を過ごしておられました。そのため、研修会の仕事や雑誌の原稿書きなどを、よく私に回してくださいました。

その時の何気ない一言が、今も鮮明に思い出されます。「いいか、大澤君。仕事はお金で受けちゃダメだよ。どんな小さな仕事でも引き受けなさい。えり好みするのではなく、いろいろ引き受けて、1つ1つ丁寧に心を込めてやることが大切なんだよ!」。

そうした仕事の1つが、当時のフレーベル館の保育雑誌『保育専科』の執筆でした。初めてフレーベル館に行ったのは、まだ社屋が神保町(千代田区)にあった頃。編集担当の方々には、保育界の状況を垣間見させて頂きました。現在の駒込(文京区)に移ってからは、「心を育てる環境教育シリーズ全3巻」などを執筆監修し、さらに、保育ナビの編集委員会(座長:無藤隆先生)では、最新の保育や幼児教育に関する研究・実践の知見や社会の動向など、普段の仕事では得られない貴重な情報や考え方を多く学ばせて頂いています。

時代が求める人材養成を目指して

2011年3月11日の東日本大震災は、一生涯忘れ得ぬ出来事です。義理の母が津波に巻き込まれましたが、奇跡的に助かり元気に暮らしていること。また、福島県いわき市に住む教え子が、子どもたちの健康を守り放射能被害を乗り超えるため、大いに活躍していること。老人から幼な子まで、人間にとって重要な「健康」と「逞しさ」を実感しています。

現在、時代が求める人材養成に対する1つの試みとして、望ましい教育環境と有能な教師集団による挑戦的活動に全精力を集中し、必死に取り組んでいます。

それが、2014年4月1日以降≪東京家政大学子ども学部子ども支援学科長および教授として≫、東京家政大学狭山キャンパスで実施している新設学部学科(子ども学部子ども支援学科・看護学部看護学科)立ち上げの仕事です。4年間を掛け、新しい時代に向けて「健康」と「逞しさ」を柱とし、真に求められる保育者・看護師養成校を創造していきます。時代が求め世の中が真に必要とする人材の養成に向け、学生・教職員・保護者の方々と共に、今まさにスタートを切ったところです!!

東京家政大学・ホームページ http://www.tokyo-kasei.ac.jp/

編集部より

大澤 力先生 あ・ら・か・る・と

大澤先生との出会いは、山内昭道先生から紹介されて『園外保育ガイド』の執筆依頼の時です。当時、わせだ幼稚園の主任だった大澤先生には、植物とかかわる遊びを紹介していただきました。その頃の保育実践が、いまの環境教育の基盤にもなっているとわかるエピソードですね。 いつも穏やかな笑顔で、他人を受け入れてくださる大澤先生。文面からも、その真面目さ、丁寧さが読み取れます。

さてさて、エピソードの中に“蜂蜜作り”のくだりがありましたが、「ご賞味させていただけるのは、いつか?」と、小さな声で願っている編集部です…。(笑)

2014.October(C.S.)

大澤先生の著書から

大澤先生の書籍好評発売中!

『心を育てる環境教育 全3巻』

1巻:心を育てるリサイクル

シリーズの第1巻『心を育てるリサイクル』は、福岡県大野城市の塩田力(つとむ)氏(通称:ソルトマン<塩男>)とは、力(つとむ)という同じ名前でもあり意気投合し、環境教育の重要性について夜を徹して語り合い、[子どもたちの環境教育に関する理論と実践を統合した楽しい教材]を目指し、養成校の学生・保育者・保護者にも活用できるように構成。オリジナルの絵本有り、キャラクター有り、テーマソングCD有りといった画期的な書籍となりました。

2巻:地球がよろこぶ食の保育

さらに、第2巻『地球がよろこぶ食の保育』でも、東京家政大学で永く一緒に仕事をやってきた仲間であるナースリールームの井桁容子先生(乳幼児保育)やヒューマンライフ支援センターの内野美恵先生(食育・管理栄養士)の全面協力による子どもたちにとって楽しく遊べる食育カルタ、食育&エコすごろく、食育豆知識カードなど、保育内容を充実できるオリジナルアイデア教材を盛り込みました。

こうした経緯から、第1巻・第2巻ともに、そのユニークでオリジナルティ溢れる編集方針と内容に対して「2008年度:子ども環境学会文献著作奨励賞」を受賞しました。

3巻:自然が育む子どもと未来

第3巻では、『自然が育む 子どもと未来』というタイトルに、自然環境の重要性を基盤とし、子どもたちの未来に大いなる夢と希望を託しました。自然環境しかり、社会環境しかり、その危うく厳しい状況を第1章で事例を挙げながら大澤がわかり易く解説し、さらに、子どもを取り巻く周辺分野の各専門家から適切な助言を寄せていただきました。また、オリジナル携帯版自然観察資料<わくわく自然体験ブック>を付けました。保育現場での日々の散歩や遠足などで実践的に活用できるものです。

『環境教育実践 ~未来のとびら~』

本書に登場する2つの幼稚園には、四季を十分楽しめる教育環境があります。実際の保育を見に行った折、園の門をくぐると子どもたちの元気な笑い声や歌声が耳に入ってきました。日本の各地に<自然環境や社会環境を大切にしたいという願い>をもって、様々な試みを行っている園がたくさんありますが、<自然環境や社会環境を大切にしたいという願い>が具体的な保育実践として形になり、記録として残り、次の保育へつながって実践され続けている園は数少ないかと考えます。そうした数少ない環境教育実践を継続的に続けている園の事例をまとめました。それはまさに、<~未来のとびら~>なのです。

「心を育てる環境教育」への想い あんなこと こんなこと・・・

☆ 「心を育てる環境教育シリーズ全3巻」…スタートから3巻完結までの道のり

このシリーズの仕事の出発は、2006年の秋、1本の電話でのアポ取りからのスタート。数日して…フレーベル館の編集長のKさんと編集担当のNさんが私の研究室に来訪。「心を育てる環境教育シリーズ全3巻」を作成したい。そして、理論的な部分を中心に大澤が執筆・編著者となり、これまでに無い<子どもを育てるための環境教育本>を作りたいとのことでした。

正直、依頼された時期は、これまでの大学教員生活で一番忙しい時期でした。しかし、二人の熱意を実感し受け止めた時、山内先生の教えが蘇り、「これは何が何でも仕上げることが必要」だと直感、「はい、お引き受けいたします!」と即答。その時に目にした二人の安堵の笑顔を今でも忘れません。

それから、毎年1冊ずつ発刊、シリーズ3巻が完成しました。途中、2008年には無事に博士(学校教育学)を取得することもできました。 「人間、本当にやろうと決心し、良き仲間と出会って力を合わせれば、かなり大きなこともできる!」といった、人生の自信にもなった仕事です。

☆ 日本には、世界には、素晴らしい教育・保育がまだまだたくさんあるということ

このシリーズ3巻を発刊するにあたり、日本各地から外国まで、多くの方々と出会い、多くの保育現場にも足を運びました。その中で、日本や世界には素晴らしい教育・保育がまだまだたくさんあると実感しました。特に環境教育は、その土地の自然・社会と直接どのように結びつけるかが主題となり、それぞれの地域の特色がいかんなく発揮されます。

こうした子どもの環境教育に関われたことで、その素晴らしさを改めて実感できたのも、大きな収穫でした。

→ 「編集部ピックアップ」 でも、大澤先生の著書を詳しく紹介しています

編集部より

著書のおすすめPOINT

『心を育てる環境教育シリーズ』は、「環境教育」の捉え方や数多くの実践をとおして楽しく取り組める内容を紹介しました。

『環境教育実践~未来へのとびら~』は、保育展開事例や指導案、保護者へのおたよりなど、実際の保育実践に役立つ豊富な資料が満載です。

子どもたちの環境教育の基盤となる書籍として、おすすめします。

2014.October(C.S.)

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