保育者様へ

フレーベル館のココだけの話

 

HOIKUのYOU歩道 第9回 村上康成先生のあんなこと こんなこと

2013/12/06

第9回目は、絵本作家であり自然派アーティストの村上康成(むらかみ やすなり)先生にご登場願いました。
村上康成先生の“YOU歩道”には、どんな発見があるのでしょう?
あなたの保育を楽しむために、ご一緒に歩いてみませんか?
“遊歩・優歩・YOU歩”…あなたにとっての道の向こうには、何が見えますか?

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村上康成先生の「はじめまして物語」
プロフィール

1955年岐阜県生まれ。創作絵本をはじめ、イラストレーション・エッセイ・タブロー、オリジナルグッズ等、独自の世界を幅広く展開し、世代を超えて多くの人々に親しまれている。

こと魚釣りへの情熱は、自他共に認める「みずぎわ族」たる所以であり、なによりその生き物たちの息づく自然に身をおくことをこよなく愛する自然派アーティストである。

デビュー作『ピンク、ぺっこん』(初版1983年10月発行/当時・福武書店、現・徳間書店)以来、絵本のもつ魅力、絵本表現の可能性をフレキシブルに探り続けている。

伊豆高原には村上康成美術館、石垣島には村上康成絵本ギャラリーがある。

【主な作品】【受賞作品】の詳細

絵本作家デビューへ…そして、絵本と30年

小さい時から外でよく遊んでいた。川、湖、山、どこも自分にとっては、ドキドキの楽しみの宝庫だった。好きなものは、魚、昆虫、植物…。もちろんプラモデルを作ったり、鉄腕アトムや鉄人28号を描いたりもした。でも、なぜかゴッホが好きだった。小学校の廊下に「オーヴェールの聖堂」の複製画が飾ってあり、時々、その絵の前に佇んでいた。

中学、高校と野球部だった。軟式だけど、高校ではキャッチャー&キャプテンで、県大会決勝戦まで進んだものの、ぼくの暴投で、さよなら負け。

翌日、美術部に入り、デッサンをかじり始めた。翌々年、入学できた愛知県立芸術大学では、デザインを専攻。ところが、浪人時代に出会った、初めての絵本、『のらいぬ』絵・谷内こうた/文・蔵冨千鶴子(至光社)に衝撃を受け、絵本表現へ傾倒していった。

でも、一番情熱を注いでしまったのは、ヨット。二人乗りのディンギータイプ。このレースに興じていた。3年間みっちり、学業ではなく、風と波と潮が身体に染み込んでいった。その反面、卒業するまでこんなことをしていてよいのだろうか、そんな気配が漂っていたのも事実。

浪人時代を共に過ごした絵本作家の長谷川集平氏が武蔵野美術大学2年の時、『はせがわくんきらいや』で、すばる書房の新人賞を受賞(1976年第3回創作えほん新人賞)し、出版されることになった。そのことに刺激を受け、これからどう進むか悩んだが、やはり自分を追い込もうと大学中退を決め、出版社の多い東京へ出た。アルバイトのほか、すばる書房・嘱託にて「月刊絵本」の編集、デザイン事務所を経て、フリーへ。

ただ、上京してからも、仲間を募ってヨットを買ったりもした。それと、もうひとつの本来の自分の毛穴が騒ぐ、渓流釣りへと、時間をつくっては奥多摩や信州に出かけていた。

小学3年の時、故郷の岐阜の川で知ったヤマメ(アマゴ)の美しさは記憶の中でも色あせることなく、出会うごとにヤマメに魅了されてきたことが、結果的に絵本の出版につながり、デビュー作となった『ピンク、ぺっこん』が生まれた。悶々と絵本表現に憧れるだけだったが、ようやく、ヤマメがきっかけをくれたのだ。

もちろん、それを薦めてくれたY編集者の洞察あってのこと。当時ちょうど発刊されたアウトドア雑誌『BE‐PAL』(小学館)でのイラストの仕事とツインカムで、自分の興味の対象とマッチングして仕事することができた。いや、やりたくない仕事はやらなかったのだが…。

絵本作家デビューから、あれよあれよと、今年(2013年)で30年。

ぼく自身

ぼくは、「絵本も描ける釣り師」と豪語させてもらっている。なにしろ、小さい時、川に潜って見たヤマメの群れの美しさが絵本作家デビューにつながって、決定的に人生そのものになってしまった。

やはり、自然は美しい。

開高健を追い、モンゴルの大平原を流れる大河での釣り。シェラネバダとロッキー山脈3,000mにしかいない鱒(マス)を釣る馬旅。へミングウェイに憧れ出かけたフロリダ。20年憧れ続けたスティールヘッド鱒をとうとう釣り上げた、カナダバンクーバーアイランド。北海道も信州も東北も石垣島にも、近所の大学の雑木林にも、いつも通う場所がある。エトセトラ、エトセトラ…。世界中にそこだけしかない美しさがある。四季を通して、生き生きと健やかに生きる美しさがある。

この星に生まれた奇跡を楽しまなければならない。絵本も釣りも、ぼくにとっては大事な生きる使命なのである。

ぼくの絵本観

最近、改めて「絵の力」「絵本の力」ってなんだろうって考える。その一つに、その絵や文字の向こう側にある自分自身と出会えるおもしろさではないだろうか。自分の確信に気づかされる大事なことがあるのではないだろうか。

たとえば、自分の生活というのは、時と共に流れていく。今の時代はそのペースがすごく速い。その分、ますます受身になりがちになっている。便利や効率を売りにどんどん新製品が開発されている。進化とは思いたくない。原発は、3.11東日本大震災後の事故後なにも解決できず、次から次へと傷を生み、放射能はどんどん広がるのみである。それにも関わらず、国は推進の方向を消さない。新聞、テレビなどマスメディアのベルトコンベアが動けば否応なく運ばれていくのである。その方向は、『どこへ?』である。

時代をつくるのは我々自身である。否応なく過ぎていく日常の中で、自分を見失うことなく生きていくこと。それは自分の中にある、あの時出会った自分があるからではないだろうか。

絵の前で立ち止まった時に、絵本を開き見る時に、ふと、自分の確信に気づく。そんな軸を絵や絵本はその人の中に芽生えさせてくれるのである。ただ、あくまでも絵本はきっかけを提供しているだけ。読んだ人が自分の気持を知り、そして、“読者が自分自身で作品を創りあげていけるのが絵本”だと思う。

絵本の基礎体力

絵本は、“楽しませてくれるものというより、楽しむもの”。同じ作品でも見る人によって思い感じることはさまざま。それは受け取る側の「基礎体力」次第。ぼくの絵本は、その空気とか匂いとか、自然の中で培った全身のセンサーをフル稼働して、出会って欲しい。楽しんで欲しい。だから、子どもたちには、外でいっぱい遊んでもらわないといけない。

『キンダーブック 3』の表紙絵と詩の連載

『キンダーブック 3』の表紙絵は、2002年度4月号~5年間、楽しく連載させていただいた。子どもの頃に絶対やらなければならないことがある。それは、“身体をつかって徹底的に自然の中で遊ぶ”こと。

たとえば、手の中に1匹のカエルがいる。命がある。キミの手は感じている。

たとえばそこに、サルビアの花が咲いている。つんと抜いて、舐めてみる。チョウやミツバチはちゃんと知っている。キミの鼻や舌は甘いって喜ぶ。

朝の冷気、太陽の熱さ、夕立の匂い、夜の闇の色…。いろんなことを感じたり、考えたりすることって、キミの全身なんだ、ということ。

頭のてっぺんから足の爪先まで、キミなんだ、ということ。

全身の毛穴を開いて、遊ぼう。センサーを磨こう。どんどん、キミはすごい生き物になっていくよ、と。

日本には、季節というすばらしい環境がある。村上康成としては、なにより、その想いで、描かせていただいた。

→『キンダーブック』の詳細

『おにいちゃんっ♪』

単行本の『おにいちゃんっ♪』は、『キンダーブック 3』の5年間の表紙連載が、1冊の画集として成就した。「外でいっぱい遊ぶって、おもしろいんだから!」とにかく、ぼくが言えるのはそれだけ。なにも構えることではなく、とにかく自然が身体に染みこんで、少しずつ、小さな体と心が培われていく、それが生き物としての「基礎体力」、センサーは間違いなく生まれ、磨かれていく。そんな想いを綴った。

『よぞらの ほしは』…月刊保育絵本から市販化へ

① 月刊保育絵本(総合誌)・オリジナル版(『キンダーブック 3』2002年12月号)では、表紙から始まる5見開きの10ページ(文字組=縦組み/右開き)構成、絵柄はマーカータッチ。

② ①の単行本化・ペーパーバック版(『キンダーおはなしえほん』2004年2月号)では、15見開きの32ページ(文字組=横組み/左開き)展開に膨らませ、再構成。絵柄はポスターカラーに変更。

③ ②の市販化・ハードカバー版(初版2004年12月発行)では、②を微調整。

絵柄のタッチは、その時にイメージしたこともあり、単行本化ではマーカータッチからポスターカラーに変えた。雲が夜空を覆い隠していくところは、グレー系の色画用紙を手でちぎって、あたかも、夜空の星々を食べ尽くすかいじゅうのようにした。やがて雲で覆い尽くされた空は、そのグレー系の画用紙1枚のみ。これが絵本のおもしろいところ。前後のつながり、関係でもっての〈見立て〉である。ここには読者のイメージが必要であるし、制作側としては、そこの〈見立て〉のリアリティーを展開しなければ、ただの色紙である。

冴えた星の夜は、底冷えで、息白く、雲がどんどん増えてくると、冷え込みがゆるんでくる。やがて、雲からは、チラホラと雪が落ちてくる。星が雪に変わったよ、そんなことを思いながらの制作だった。

もうひとつ、この物語を動かすのは、動物達。必死で白い息を吐きながら生きている。
吐く息の音も文字として楽しんだ。

『なつは ひるね』

オリジナル版は、5見開きの10ページ構成。夏の海、100パーセント。遊んで遊んで、食べて食べて、遊んで。ヤシの木陰でお昼寝。遊び疲れて、ハンモックにゆらゆらたゆたう、それだけ。

ザザーン、サラサラサラ。ザザーン、サラサラサラ。波が、寄せては引き、繰り返す。こんな時間、みんなが欲しい!

きっと、お子さんよりも、お母さん、お父さんが欲しくなるかもしれないな。

編集部より

村上康成先生  あ・ら・か・る・と

2002年度の『キンダーブック 3』の表紙絵を探していたある日のこと…。村上先生の絵が、まるで “お告げ” のように降りてきたのです。それからの三日三晩ならずの三週三昼(?)、依頼の打診開始! ところが、なぜかいつも昼食時に電話が繋がり長丁場に…。「お蔭で、(食べようとしていた)蕎麦が伸びた…」とは、村上先生。

「表紙から始まるおはなし」から単行本化へのチャレンジ! 11年前の記憶の果てには、苦悩というよりも “闘い続けた” 楽しいエピソードの数々が…?

キンダーブック(月刊保育絵本)の担当を離れた今では笑い話ですが、当時を振り返ってみると、村上先生との出会いの中で、いつも素敵なメッセージが込められた絵に気づかされます。

2013.December(C.S.)

村上康成先生の著書から

村上先生の書籍好評発売中!

村上先生の絵本との思い出…あんなことこんなこと (編集部より)

よぞらの ほしは

よぞらの ほしは

『よぞらの ほしは』を単行本化する際、「表紙から始まるオリジナル版を見て育った園児が大人になった時に、“あれっ?この絵、どこかで見たことがあるよ…?”なんて、記憶を辿ることができたらいいね」と、村上先生。オリジナル版とペーパーバック版&ハードカバー版は、絵柄のタッチも文字組も、ページ構成も違うのですが、それぞれが初雪前の冷えきった星空に誘ってくれます。そして翌朝、空には雪が舞い、ほんわりと暖かくなって…。

吐く息で表された身近な自然現象。登場するのは、すべて冬の生き物。初雪前夜の寒暖差を、子どもたちにも体感できるよう、リズミカルなネームと楽しい展開で伝えています。

おにいちゃんっ♪

おにいちゃんっ♪

「自然と子ども」をテーマに5年間描き下ろした表紙絵は、キンダーブック創刊80周年記念出版『おにいちゃんっ♪』として発行(2007年)されました。表紙絵と付録『マザーズブック だ・い・す・き』に掲載された詩が、[村上康成ワールド]に案内してくれます。

この[キンダーブック 3 表紙画集]は、各年度ごとに5分冊された電子書籍(2013年12月13日発行)としてもご覧いただけるようになりました。

電子書籍『おにいちゃんっ♪』 Vol.1~Vol.5

→ 「編集部ピックアップ」 でも、村上先生の著書を詳しく紹介しています

編集部より

著書のおすすめPOINT

「外でいっぱい遊ぶって、おもしろいんだから!」

構えることなく、まずはトライ! 子どもに教える前に、自らが体現者となっている村上先生。「時代をつくるのは、我々自身である…あくまでも絵本は、きっかけを提供しているだけ」。

そんなメッセージが込められている村上先生の絵本。同じ作品でも感じ方はさまざま。そして、絵本を自分で楽しむことの大切さを教えてくれています。

絵本の「基礎体力」を、子どもたちと一緒にたくさん発見してください。

2013.December(C.S.)

【主な作品】

『ピンクのいる山』などのヤマメのピンクシリーズをはじめ、『青いヤドカリ』『山のおふろ』『やきいもの日』(徳間書店)/『くじらのバース』『フィフィのそら』『こぐまのプディーカヌーでスイーコ』『スダジイのなつ』「999ひきのきょうだい」のシリーズ(ひさかたチャイルド)/『ふゆのあさ』『なつペンギン』『もみじちゃんとチュウ』(ひかりのくに)/『おにいちゃんっ♪』『よぞらのほしは』(フレーベル館)/『星空キャンプ』『ライギョのきゅうしょく』『いのちのおはなし』(講談社)/「わがままいもうと」『きぜつライオン』『きちょうめんななまけもの』『ともだちキリン』(教育画劇)/『おにぎりくん』『たまごやきくん』『からあげくん』(小学館)/『さかなつりにいこう!』(理論社)/『うちのきんぎょ』『うちのおかあさん』(世界文化社)/中川ひろたかとコンビを組んだ人気シリーズ『さつまのおいも』(童心社)などのピーマン村シリーズ他多数。近作に、『どろんこ! どろんこ!』(講談社)/『すいか!』(小峰書店)など。

【受賞作品】

  • 『ピンクとスノーじいさん』(徳間書店) 1986年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞
  • 『プレゼント』(文・長谷川集平/BL出版) 1988年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞
  • 『ようこそ森へ』(徳間書店) 1989年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞
  • 『ピンク! パール!』(徳間書店) 1991年ブラチスラバ世界絵本原画ビエンナーレ金牌
  • 『森へようこそ』カレンダー 1997年第48回全国カレンダー展特別部門賞
  • 『なつのいけ』(文・塩野米松/ひかりのくに) 2003年第8回日本絵本大賞
  • 『オタマジャクシのうんどうかい』(文・阿部夏丸/講談社) 2003年第14回ひろすけ童話賞
  • 『石のきもち』(ひさかたチャイルド) 2012年第3回ようちえん絵本大賞
  • 『999ひきのきょうだいのおひっこし』(文・木村研/ひさかたチャイルド) 2012年ドイツ児童文学絵本大賞ノミネート
  • 『おおきくなるっていうことは』(文・中川ひろたか/童心社) 2013年第4回ようちえん絵本大賞

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