アンパンマンをかきはじめてから約30年になります。最初はおとなを対象にしたメルヘンとしてかいていました。そのころぼくは、フレーベル館で『やさしいライオン』という絵本を出版して好評だったので、引き続き絵本の仕事を多くするようになりました。
アンパンマンも1冊の絵本として出版されたのですが、最初の頃はあまり評判がよくなくて、ぼくもこの絵本の「あとがき」で現代の子どもたちにはあまり理解されないかもしれないみたいなことをかいています。
この本を認めたのは4歳、5歳の幼児です。いつのまにか人気者になり、本当に静かに作者もまったく気がつかないうちに全国的にひろがっていきました。本当に不思議です。
そして、ぼくはなんだかわけがわからないまま、アンパンマンの絵本をつくり続けることになります。それまでの子どもたちのヒーローは、だいたいコミック 雑誌の連載漫画か単行本から人気がでて爆発的にヒットするということが多かったのですが、アンパンマンは最初がメルヘン、そのあとは幼児用絵本からという、あまり先例がないケースです。
作者のぼくはもう若くなくて、ぼつぼつ気楽な仕事だけに切りかえてのんびり余生を過ごそうかと思いはじめていたのが、急激に忙しくなってしまいました。
でも、アンパンマンという稀有なキャラクターにめぐりあえたことは、作者としては幸福だったと思います。アンパンマンのテーマは、傷つくことを覚悟しな くては正義は行えないということと、献身と自己犠牲です。しかし、見たところは赤いほっぺに赤い鼻、丸顔で微笑しながら、世紀を越えて飛ぶ優しく愛らしい ヒーローです。








